国内EC各社が配送サービスを競う
プライムは会員になると、電子商取引(EC)の配送料が無料になるほか、動画配信も無料で視聴できるアマゾン独特のサービスだ。
単一サービスと比べて安いか高いかは一概に言えないが、米ネットフリックスの日本と米英の料金を比較すると、プライム料金ほどの差はない。
米国のプライムでは医療系サービスなど日本国内で展開していない事業も提供する。
そうしたサービスの幅の違いも値段の差に影響しているとみられる。
日本の料金が安い理由について、アマゾンジャパンでプライム事業を統括する鈴木浩司氏は「ユーザーのニーズを考慮した結果」との回答にとどめるが、背景にはEC市場での競合他社の存在もありそうだ。
アマゾンは日本のプライム会員数や利用者数を開示していないものの、データ分析のヴァリューズ(東京・港)によると、アマゾンの7月の利用者数は3590万人。楽天グループのECサイト「楽天市場」は3200万人で拮抗している。
楽天Gは新型コロナウイルス禍での巣ごもり需要以降もEC事業の好調を維持する。
国内では他にもZホールディングス(HD)が「ヤフーショッピング」などを展開。
家電量販のヨドバシHDもEC事業を強化するなど競合がひしめく。
都心などで電車やバスといった交通網がきめ細かく整備され、コンビニエンスストアなど小売店も充実している日本ならではの事情もある。
「オフラインの買い物がしやすい傾向にある」(鈴木氏)日本では、急激な値上げは顧客離れを招きかねない。
アマゾンは国別の会員数を開示していないが、JPモルガンの推計では、22年の米国の会員数の伸びは、値上げの影響もあって10%と前年から5ポイント下がった。一方、8日にはグローバルで会員向けの大型セールの追加実施を発表するなど会員サービスの充実に余念がない。
鈴木氏は「(値上げ後も)十分納得してもらえる内容。サービスをさらに充実させる」と自信をのぞかせる。
ただ、サービス拡充に伴い投資コストも膨らむ。アマゾンジャパンは翌日配送の対象地域を拡大し、物流施設の増設を続ける。
日本市場への投資額は10~21年で4.5兆円を超えるが、今後もさらなる投資が見込まれる。