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イオンの出番 脱・ゆるやかな連帯

2023.08.28

ドラッグストア業界で再編圧力が高まっている。
ツルハホールディングス(HD)、クスリのアオキホールディングスに対する「物言う株主」の提案は、それぞれ8月の株主総会で否決されたものの、創業家が「自主独立」路線を貫くハードルは上がってきた。
大量出店でぶつかり合う過当競争が続くなか、改めて注目されているのがイオンだ。
ツルハ、アオキ両社にも出資している。いったん再編の歯車が回れば、大手2社に集約された米国のような未来が訪れる可能性がある。
出資先同士も競合
東京都世田谷区の住宅街に足を運ぶと、いまのドラッグストア業界を象徴する競争の構図が見えてくる。
まずイオンが出資するチェーン同士の競合がある。
「ツルハドラッグ世田谷千歳台店」は、イオンが約13%出資する業界2位のツルハHDの運営だ。北海道発祥ながら、すでに全国展開しており、都内にも多くの店をもつ。
そして同店から徒歩5〜6分ほどで「ウエルシア世田谷千歳台店」に着く。
展開するのは2014年にイオン子会社となり、連結売上高1兆1442億円(23年2月期)の業界トップに立つウエルシアホールディングスだ。
至近距離で顧客を奪い合う2店の売り場を比べると、イオンとの距離感が大きく異なることが浮かび上がる。
例えばプライベートブランド(PB)商品。ウエルシアは薬や日用品、化粧品のほか、スーパーのように食品や酒を豊富にそろえる。
その中で自社のPBに加え、価格競争力のあるイオングループのPB「トップバリュ」も充実させている。
店内では、イオングループのWAON(ワオン)ポイント利用を勧めるキャンペーンも告知する。
「ナナコ」が使えるツルハ
一方のツルハでは、同様に食品や酒を充実させてはいるものの、「トップバリュ」はほとんど目につかない。
自社PB「くらしリズム」は医薬品も含め、豊富にそろえている。
そして決済手段として電子マネー「nanaco(ナナコ)」も使える点が、ウエルシアとの分かりやすい違いだろう。
ナナコはイオンのライバルであるセブン&アイ・ホールディングスが展開している。
イオンと提携するチェーンがナナコを導入するのは、流通業界の常識からも異例だ。ツルハではイオンの電子マネー「ワオン」も使えるが、17年からナナコにも対応している点がイオンとの微妙な距離感を物語っている。
1995年に資本・業務提携したイオンとの関係が冷えているのでは、という観測が強まったのは、岡田元也イオン会長が16年務めてきたツルハの社外取締役を21年に退任したことが大きい。
現在、ツルハにイオン出身の取締役はいない状態だ。
イオンが示した「再編の重要性」
そうした状況で、ツルハ株を大量取得した香港の投資ファンド、オアシス・マネジメントが株主提案を突きつけた。
経営体制について「創業家の不当な影響力がある」と指摘し、社外取締役候補5人の選任や、創業一族の鶴羽家が就く取締役会長の廃止などを求めた。コーポレートガバナンスの欠陥を改善し、競合他社との再編を促す狙いだった。

     
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