1~10月まで軽貨物運送の倒産35件、過去最多に
帝国データバンク(TDB)は11月12日、「軽貨物運送業界」の倒産発生状況について調査・分析を行い、その結果を発表した。
集計期間は2023年10月31日まで、集計対象は負債1000万円以上法的整理による倒産。
それによると、個人宅への配送など物流の最川下・「ラストワンマイル」物流を担う軽貨物運送の倒産は、2023年1~10月までに35件発生した。
すでに22年通年の件数(22件)を上回り、過去最多を更新した。
軽貨物運送ではフリーランスの委託ドライバーや小規模零細企業が多く、件数に表れない廃業などを含めればより多くの軽貨物運送業者が淘汰されている可能性がある。
黒ナンバーの軽バンを使用し、個人向け小型荷物などを取り扱う軽貨物運送は、コロナ禍でネット通販の需要が高まった「宅配特需」も追い風に参入が相次ぎ、宅配大手やEC企業から個人宅への配送を請け負うラストワンマイル物流の担い手としてその重要度が増してきた。
一方、EC荷物の小口・多頻度化や細かな時間指定、特に個人宅向けでは再配達義務など配送ドライバーの残業増に対応した人件費や、高騰する燃料価格などのコスト負担が増加している。しかし、「荷物1個あたり運賃単価の引き上げ交渉は厳しい」ほか、他社への再委託など多重下請構造を背景に、コスト増に見合う十分な運賃収入が得られず、22年度は軽貨物運送の23.9%が「赤字」、減益を含めた「業績悪化」は半数超にのぼった。
2024年以降は時間外労働の上限制限でマンパワー不足が表面化するとみられるほか、参入事業者の増加による低価格競争の激化、インボイス制度導入によるコスト増など課題が山積している。
各種負担に耐え切れずに事業継続を断念する中小の軽貨物運送業者が今後も増加すれば、質の高い宅配網が維持できなくなる「宅配クライシス」が現実となる可能性もある、としている。