ENEOS物流倉庫に
2024.07.31
倉庫や高齢者見守り――。ガソリンスタンド(GS)が変身を急いでいる。資源エネルギー庁によると2023年度末のGS数は2万7414カ所。この10年間で約7200カ所が姿を消した。国内のガソリン需要は年率2%ほどで縮小しており、何か手を打たなければ淘汰は必至だ。燃料油以外の収益基盤に活路を求めるが、まだ解は見えていない。
荷物の配達員が出入り
東京都足立区でENEOSの看板を掲げる「Dr.Driveセルフ保木間店」。ある者は自転車に乗り、ある者は徒歩で訪れ、1メートル四方で高さ2メートル弱の荷物保管ラックから段ボールを取り出し、走り出していく。中身は大手通販サイトの商品だ。配達員はアプリを介して単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」で、GSの店員ではない。
GSは利便性の高い場所にあることが多く、トラック車両の出入りもしやすい。給油も、店舗内での休憩もできる。ENEOSは、こうしたGSの強みを生かし、配送網の「一時保管場所」として活用する実証を2023年から首都圏の約70カ所で始めた。実証には三菱商事が協力する。
預かるのは、GSから半径2キロメートルほどの住民に届ける荷物だ。物流会社にとってはラストワンマイルの作業が効率化し、配送にかかる距離・時間を3〜4割減らせる。ENEOS側は物流会社から配送料を受け取り、特約店やギグワーカーに分配する。
運送業の残業規制による物流の混乱「24年問題」を緩和する一助になるとの期待も大きい。ENEOSでは現在、対象とする荷物の大きさや金額などを詰めており、26年度に正式な事業に格上げする計画だ。